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専攻科論文

子犬の行動発達と家庭およびペットショップにおける社会化

専攻科 中屋敷茜

-概要-

問題:
犬の行動学についての研究は、今から60年以上も前から行われてきた。1945年にアメリカのメイン州バーハーバーにあるRoscoe B Jackson研究所で、犬の遺伝と社会行動の関係についての大規模な研究が行われ、数多くの重要な発見がなされた。この研究により、犬の初期の発達段階は、1:新生児期、2:移行期、3:社会化期、4:若齢期の4つの段階に大きくわけられるという概念が提唱され、その中でも社会化期は犬の一生の中で最も感受性が高い時期であり、この時期の経験は子犬の生涯にわたって影響を及ぼすということが分かった。(Serpell,James,1999)
方法:
そこで本論文の第一章では、犬の行動発達に関する内外の文献に基づいて、子犬の成長に伴う発達の過程を総括し、第二章では環境省(2004)によるペット動物流通販売実態調査報告書を基に、新しい家庭およびペットショップにおける子犬の適切な社会化について検討した。
結果:
新生子期は生まれてから生後2週目までの期間であり、食も睡眠も体温調節も、その生活のほとんどを母親に依存して過ごす。1日のうち90%を睡眠、残りの10%を授乳に費やし、体重の増加と身体の成長に専念する無意識の時代である。
 移行期は生後13日前後の開眼期に始まって、約18~20日頃の開耳による驚愕反応がみられるまでの短い期間であり、少しずつ自立した状態へと発達していく時期である。人に近づいていったり兄弟犬との遊びを始め、吠えたり尾を振るといった社会的行動のシグナルを表現し始める。
 社会化期は生後3~16週の犬の一生の中でもっとも感受性の高い時期であり、好奇心旺盛で新しい刺激や動く物体に進んで近づいていくようになる。子犬は母犬や兄弟犬との関わりを通して犬社会でのコミュニケーションを学び、様々なボディランゲージや咬みつきの抑制、兄弟間での序列を身につけていく。同時に人や自分と異種の動物と触れ合うことで愛着を形成し、自分を取り巻く環境に慣れ親しんでいく。
 若齢期は生後16週~性成熟を迎えるまでの期間であり、学習能力、運動能力は成長し、子犬は状況に合わせた行動がとれるようになる。性成熟はオスが約7~8ヶ月、メスが約6~12ヶ月である。
考察:
環境省の調査結果により、子犬が販売される日齢は生後約40~60日が多く、親元から離されるのはさらにその約一週間前であることが分かった。生後40~60日というのは犬にとって非常に大切な社会化期であり、この時期をどう過ごすかで子犬の一生に影響を及ぼす。社会化とは、犬や人、その他の色々なものに接することによって、周囲の様々な環境に慣れることである。人間社会で犬も人もお互いに快適に暮らすためには、日常生活の中で沢山のマナーを身につけなければならない。ペットショップでも新しい家庭でも、子犬を迎えた時からその犬が将来出会うであろう様々な刺激に慣れさせ、先を見越した社会化を行うことが重要である。社会化期に沢山の経験をした子犬は、日々の様々な状況においてもうまく対処することができ、新しいものを受け入れる力に富んでいる。この新しいものを受け入れる力を養うために、人に対する社会化、犬に対する社会化、環境に対する社会化の三本柱が必要不可欠であると思う。

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